普段は飛行機や車での移動ばかり。たまにはローカル線でゆっくり旅をしてみたい。でも、青春18きっぷは利用期間が限られているし、5日分も使い切れる気がしないし……。そんな悩みを抱える方に、JR東海の「乗り鉄☆たびきっぷ」というフリーきっぷを紹介したい。

JR東海の在来線と、中部・近畿地方16私鉄のフリー区間内の普通・快速列車普通車自由席が2日間乗り降り自由になるこのきっぷ。別途料金券を購入すれば東海道新幹線熱海~米原間の「こだま」「ひかり」号が4回まで利用できるほか、在来線特急・急行列車は回数制限なく利用でき、柔軟な旅程が組めるのが特長だ。利用期間は通年土・日曜・祝日の連続する2日間で、利用日当日まで購入可能。週末にふらっと出かけたいと思ったときにも重宝する。値段はおとな8,480円。こども用(3,990円)も設定されているので、親子での旅行にも使いやすい。

今回はこの「乗り鉄☆たびきっぷ」を使って、愛知・静岡の私鉄に乗る旅に出かけてみた。

愛知県唯一の路面電車 豊橋鉄道東田本線

乗り鉄旅は豊橋駅からスタート。最初に乗車するのは豊橋鉄道東田本線(通称・豊鉄市内線)。豊橋駅前と赤岩口・運動公園前とを結ぶ路面電車で、現代の東海道である国道1号線を走る唯一の路線でもある。まずは豊橋駅東口の駅前電停から市役所前電停へ。

市役所前電停の傍に立つのは豊橋市公会堂。1931年に竣工したロマネスク様式建築で、1998年に国の登録有形文化財に指定されている。ところで「乗り鉄☆たびきっぷ」では、専用アプリを使って沿線の指定スポットでチェックインできるポイントラリーに参加できる。チェックインごとにポイントが貯まり、ポイント数に応じて各鉄道のオリジナル壁紙をダウンロードできるほか、JR東海と私鉄16社の鉄道グッズが当たるキャンペーンに応募できる。賞品には実際に使われていた運賃表や車両の速度計、700系の方向幕など、鉄道ファン垂涎の品々が用意されている。

早速アプリをダウンロードし、きっぷの情報を登録。あとは指定スポットに行くと、アプリ上でチェックインが可能になるらしい。豊橋市公会堂もスポットに指定されているため、早速チェックイン。50ポイントゲットした。

さて、豊鉄市内線ではもう一つ、東田坂上電停付近に「石畳を駆け上がる路面電車」というスポットが指定されているので向かってみる。電車に乗って向かう途中、それまでアスファルトだった軌道敷が石畳になった。

東田坂上電停に到着。近くの歩道から「石畳を駆け上がる路面電車」の撮影を試みた。日中時間帯の運行間隔は約7分に1本。2本ほど待ってみたが、自動車に阻まれたりしてうまくタイミングが合わず。代わりに石畳を“駆け降りる”シーンを撮影した。

その後、終点の赤岩口電停へ。電停の奥には車両基地がある。

▲宴会仕様の「おでんしゃ」車内。

取材のため特別に許可を得て敷地内に入らせてもらうと、車庫に止まっていた「おでんしゃ」が目に入った。豊橋の車窓を楽しみながらおでんとビールを味わえる豊橋鉄道の名物電車で、2018年シーズンの運行は11月9日から開始している。

▲「MOSS BAY STEEL 1894」と刻まれている。

赤岩口の車両基地では、日本の鉄道初期に使われたレールが現役で残っている。多くは1800年代後期から1900年代初期にかけて製造されたもののようで、当時の発注者としての「I.R.J」(Imperial Railways of Japan/鉄道院)という刻印や、「CHARLES CAMMELL」や「MOSS BAY STEEL」といった英国の鉄鋼メーカーの刻印が確認できた。赤岩口車両基地は毎年4月の「市電の日」などに公開イベントを行っているので、訪れた際には足元にも注目してほしい。

さて、市内線で再び豊橋駅前へ。続いては浜松へ移動する。前述の通り、「乗り鉄☆たびきっぷ」では料金券を別途購入することで4回まで新幹線を利用可能。約13分で浜松に移動できる。豊橋~浜松間は在来線でも約35分で移動できるので、行程によって在来線と使い分けよう。

赤い電車で浜松縦断 遠州鉄道

浜松駅から徒歩1分、新浜松駅にやってきた。ここから乗車するのは遠州鉄道西鹿島線。浜松市内を南北に走る全線単線の鉄道で、車体の色から地元では「あかでん」とも呼ばれているそうだ。

▲「あかでん」かと思いきや、緑色のラッピング広告車が現れた。

新浜松駅から4駅、八幡駅で下車。駅の西側には楽器製造などを手掛けるヤマハが本社を構えており、ホームからも社屋が見える。

それならば駅名も「ヤマハ前」などになりそうなものではあるが、「八幡」の名はこの地に平安時代から鎮座する浜松八幡宮に由来する由緒あるもの。遠州鉄道の新車納入時には、この浜松八幡宮の神職さんに安全祈願をしてもらっているそうだ。

1573年、三方ヶ原の戦いに敗れた徳川家康は、八幡宮の境内に立つ楠の洞穴に逃れた。その時、この楠から瑞雲が立ち上がったことから、「雲立楠」と称されるようになったという。中部地方は戦国時代に三英傑が台頭した地。鉄道でその歴史を巡るのもおもしろい。ちなみにこちらもアプリの指定スポットなので、チェックインを忘れずに。

続いて訪れたのは、珍しい機関車が留置されているという西ヶ崎駅。

トーマス色のこの機関車はED28形電気機関車2号機。1925年に旧豊川鉄道が購入した英国製の機関車で、その後国鉄を経て、遠州鉄道には1959年にやってきた。現在は、保線工事などで夜間にひっそりと活躍しているそうだ。

ED28形の前でもチェックインしてポイントを貯め、「あかでん」に乗って終点・西鹿島駅へ。

ここで昼食休憩。せっかく浜松に来ているので、西鹿島駅近くのお店でうな重をいただいた。ご当地の名物を食べるのも乗り鉄の楽しみの一つである。

昭和と北欧と 天竜浜名湖鉄道

腹ごしらえを済ませ、西鹿島からは天竜浜名湖鉄道に乗り継ぐ。略して「天浜線」と呼ばれるこの路線は、東海道線のバイパスとして建設された旧国鉄二俣線が前身だ。掛川から浜名湖の北を通り、湖西市の新所原までを片道約2時間10分で結ぶ。現在は、風光明媚な天竜エリアや浜名湖など、浜松市の名所への足となる観光路線にもなっている。

▲覆い被さるように茂る木々のトンネルの中を進んでいく区間も。

この天浜線には、SNS映えすると噂の一風変わった駅がある。遠州鉄道との連絡駅・西鹿島駅から西に4駅の無人駅、都田駅がそうだ。

駅舎を彩るのはフィンランドのアパレルブランド・マリメッコの生地。駅舎内に飾られたファブリックパネルも、併設されたカフェで使用される食器もマリメッコのもの。ついさっきまで、日本の原風景の中を気動車に揺られていたはずでは……。森のトンネルを抜けて、不思議の街に迷い込んでしまったのかと錯覚してしまう。

ローカル線の途中に突如現れるこの北欧の空間は、地元の建設会社である都田建設が手がけたもの。元々、都田周辺で「ドロフィーズキャンパス」という北欧タウンを手掛けていた同社が、駅のリノベーションを提案して実現したという。こちらもアプリのチェックインスポット。

▲西鹿島~二俣本町間で天竜川を渡る。

その後、再び西鹿島方面へ戻って天竜川を越え、最後に訪れたのは天竜二俣駅。この駅と隣り合う車両基地には、旧国鉄二俣線で蒸気機関車が活躍していた時代の転車台と扇形車庫が現役で残っている。それらを使って天竜浜名湖鉄道が4月から始めたのが、「洗って!回って!列車でGO!」というイベントだ。

天竜二俣駅から専用列車に乗り込み……

洗車機に入って車内から車両洗浄を体験。

そのまま転車台で1回転する。

そして、車両基地内で降車した後は扇状車庫を間近で見学できるというもの。元々は子ども向けとして考案されたそうだが、実際は大人の参加者も多いというこのイベント。毎週土・日曜および祝日に予約制で実施されている。乗車したまま転車台での回転を体験できるイベントは全国的にもかなり珍しいので、是非参加してみてほしい。

イベント参加者は車庫に隣接する鉄道歴史館も見学できる。国鉄時代に使用されていた駅名標やダイヤグラムなど、貴重な品々が目白押しなのでこちらも必見だ。

▲奥に立っているのは蒸気機関車の給水に使っていた貯水槽。

▲旧国鉄二俣線時代の運賃表もあった。

また、車両基地の事務所や乗務員の詰所もほぼ国鉄時代の状態のまま、今も現役で使用されているというから驚きである。都田駅の北欧の雰囲気からは一転して、天竜二俣駅にはノスタルジックな景色が残されていた。

最後は掛川駅まで乗り鉄の旅を楽しみ、新幹線で帰路へ。スケジュールの都合上、一日だけの旅程ということで駆け足になってしまったが、日中いっぱいで3つの私鉄に乗ることができた。アプリには400ポイントほど貯まっており、各社のグッズが当たる抽選に一口応募できるようだ。どの賞品にするか悩みながら決めたいと思う。冒頭でも述べているが、「乗り鉄☆たびきっぷ」は全16私鉄に乗車でき、有効期間は2日間。普段はなかなか鉄道で旅をする機会がないというみなさんも、今度の週末は友人や家族などと鉄道の旅に出かけてみてはどうだろう。

情報提供元:Traicy
記事名:「16私鉄とJR東海が乗り放題の「乗り鉄たびきっぷ」で、私鉄巡りの旅に行ってみた【レポート】